単に無軌道であること・無知から生まれる放埒・貧困な欲望の垂れ流しこそが Rock であるとされているこの日本において、真に心の底からの興奮を、感動を、喜びその他あらゆる感情を呼び覚まさせられる音楽は「松浦亜弥」というプロダクトの中にしか存在しないのです。ひと粒の音すらないがしろにされることのない統制され尽くされた世界。だらけきった肉塊が発散する不潔な臭波に充ち満ちた汚濁の日常を洗い流してくれるかのような。ヒットチャートからは腐臭が漂っている。ただひとつの音をのぞいて。

…という観点からすれば、ライブの模様を収録した DVD などはあまり感心できない代物なのですが、でもやっぱり面白かったですね。彼女の見目をそれほど注視したことがなかったので、そういう意味でも興味深いものでした。しかしそんなことはわりとどうでもよくて、CD で聴いただけではわからない歌唱法の機微を聴き取ることにこそもっとも注力したわけで、いろいろわかったことがあったのですが、それらの文脈を子細に語ることはできないです…。

と、投げっ放すのもアレなのでちょっとだけ書くと、CD で聴いただけではわからない、というのは、節回しやリズムの取り方に表れるはずの感情演出の手法がはっきりとは聞こえてこないということで(トータルな完成度をより重視するプロデュース方針なのでしょう)、そういう意味で面白かったのが、最後から 2 曲目の「初めて唇を重ねた夜」の歌唱でした。そこで聴かれるのは、先に述べた Rock から遠くはなれた筋肉の激しい運動と歌が歌われることが孕む本質的な無軌道さとのせめぎ合いであり、そうした事件が起こってしまうそういう場にこそ Rock という言葉がふさわしいのだと思うのです。

以上、「ファーストコンサートツアー 2002春 “ファーストデート”」鑑賞直後の感想でした。