音楽配信メモ の津田大介さんによる編著書『だから WinMX はやめられない』を読みました。まずあり得べき誤解に先んじると、この本は某「ネットランナー」誌とかそういうアレ関係なノリの犯罪者養成本ではありません。
WinMX を始めたのは 2001 年 11 月。世界初となる、WinMX での逮捕者が現れたすぐあとのことだ。それから約 1 年半という短い期間で、自ら WinMX の子鯖を運用するまでにいたったということになる
男の体験記を編著者の津田大介さんが編集したのがこの本だということなのですが、僕がインターネットを始めたのがちょうど同じ時期(逮捕者が出た日の翌日ぐらい?)で、インターネットにつながって初めてやったのが WinMX だったということもあって、その辺の話の流れがなんというか懐かしいなぁ、と。
なにで知ったのか「WinMX っつーのがすごいらしい。ついてはインターネットを始めたらばさっそく試してみねば!!!」と、ADSL が開通したという知らせを受けた瞬間、ダウンロード & インストール、そして大量のアレゲなファイルがザクザクと!!! それから半月ほどは暇さえあれば検索しては IM で交渉(というか、最初はファイルが全然ないので泣き落とし)したり DOM ったり、いろいろ情報を得て子鯖なる世界に立ち入ってみたりしつつファイルを増やしていったらノートパソコンの 20GB のハードディスクはすぐに埋まってしまって「さて、これらをどうしたものか…?」と思案に暮れるなんてことをやってたものでした。インターネットを始めた直後だし、普通には手に入らないようなものや高価なものが無料で手に入る驚きや、そこにコミュニケーションが加わることによるゲーム的な面白さに夢中になりはしたものの、結局はその半月で飽きてしまい、その後は kazaa とか海外製のソフトにちょぼちょぼと手を出したりしてました。
てゆか、P2P ソフトっつーかファイル共有ソフトに僕が期待していたのは、インターネット上にあらゆるコンテンツのアーカイヴを構築してしまおうという野蛮な欲望に対してであって、そういう意味でいうと(この本の後半部で描かれる会員制の子鯖等のディープな世界をしらないのでアレなのですが)WinMX はつまらない。インターネットのことなど 1 ミクロンも知らない頃になんかの記事で「(ヤバい写真かなんかを、利害関係者が引き上げようとしたことに関して)いまは Web に流せばすぐに広まるからそんなの意味ない」みたいなことを書いてあったのを読んで「インターネット、超ヤバい!!!」と思い、その数年後、Napstar, Gnutella 等についての記事を読んでアーカイヴ的な妄想を育み、そのまた数年後になって実際に触れた世界は TSUTAYA とかブックオフやテレビと同じく荒涼とした風景が広がっているだけ。もっと時間的・空間的な広がりのある世界を想像していたのですが…。
というわけで、ユリイカさん による以下の指摘に共感を覚えました。
なにもWinMXユーザ全員がレッシグ教授がいうところのコモンズ的な思想を実践してるとは僕も別に思っちゃあいないけど(てか人の作ったコンテンツを無断で複製配布するって時点でコモンズとは違うのかも知れないけど)、僕がこの本に求めていたのはWinMXヘビーユーザの視点から見た現行の著作権法に対する考え方とかそのスタンスであったりとか、今現在行き詰まりを見せている(商売としての)デジタルコンテンツ流通に対してのP2Pというテクノロジー利用者によるなんらかの提言だったりなんかしたわけで、この手記書いた人みたいに「社会人になってもWinMXで簡単に友達出来たよー。」とか「WinMXは僕にとって最高のサークル活動ですね。」とかいわれても、そのあまりにも能天気な態度に「え?はぁまぁそうですか・・・?」という感想しか出てこなかったです。
[ THEMCLIP @03-07-08-Tue より]
まぁひとことでいえば「即刻、一秒でも早くタイーホされてください!」と切に願わざるを得ない能天気ぶりに呆れ返るほかはないのですが、とはいえ、アーカイヴとかいって妄想にふけるのも能天気ぶりにおいては勝るとも劣らないわけで(当然、著作権法的に問題ありまくる話なわけだし)、長々と書いてるうちになにをいいたかったのかすっかり忘れ果ててしまったのですが、なんというかこの世界が退屈であるのと同様に、あちらも退屈であるのだなぁ。というよりもむしろ、端的にいって、TSUTAYA とテレビをまぜこぜにしたところで面白くもなんともないしなんのイノヴェーションも起こらないだろ、というヲタ的な厭世に苛まれているだけ、というか。