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小沢牧子 + 中島浩籌・著『心を商品化する社会 – 「心のケア」の危うさを問う』

『心を商品化する社会 - 「心の
ケア」の危うさを問う』

小沢牧子 + 中島浩籌・著『心を商品化する社会 – 「心のケア」の危うさを問う』を読みました。

本書のいう「心理主義の社会への浸透」とは、例えばなにごとか事件が起こるときまって「心のケア」が叫ばれてしまうという事態が、実のところは社会的関係を視野から外し、事を個人の「心の問題」へと矮小化する態度の蔓延であるとされている。具体的には、学校や企業へのカウンセラーの導入が進んでいることに現れる。心理主義の浸透により、行政、企業経営者、教師、カウンセラーたちは、それら集団の中でのライブ体験としてある個人間の関係、あるいは問題をはらんだ権力関係を問うことなく社会的諸条件を放置したまま、個人の問題としての心をカウンセリングし悩みを解決することの方に重きをおくことになる。

…つーか、まぁアレだ。早い話が「同情するなら金をくれ!」ということですね。もちろん事は金だけの問題ではないのですが。例えば心理主義云々ってのは「虐められて死にたい」といってる子供を呼びつけて「右の頬を殴られたら左の頬をさしだしなさい」「我慢しているうちにその痛みがだんだん快楽となっていくのです!」などとわけのわからないことをいって問題をごまかしていこうってな態度なわけで、本書がいうのは、問題はそんなところにはなくて、例えばいじめであれば児童・生徒間の関係や教育のあり方こそを考えるべきだ、という話になる。

しかし、だから心理主義なるものは排撃せよという話になるかといえばそういうわけでもなくて、例えば PTSD なんて言葉は阪神大震災以前はほとんど知られることがなかったわけで、なんでもかんでも PTSD うんたらとか言いだすのはもちろん問題ではあるにしても、それまでならややもすると「気のせいだよ」などといわれかねなかっただろう状態をそのように名指すことが一般化したおかげで問題が周知されたという効果もあるわけで、要は、心の問題というのは現に存在するのでそれはそれで対処しなければならないし、しかしその背後には社会的関係が存在するのだからそれを忘れてはならないということでしょう。

やっぱり中途半端な感想に終わる…。

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