隣席のるびりすと氏が献本された『たのしい開発 スタートアップRuby』を読みました。

- 作者: 大場寧子監修,大場光一郎,五十嵐邦明,櫻井達生著
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2012/07/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書はおおきく2つのパートにわかれています。前半が、RubyおよびRailsのさわり。後半が、Rubyの文化やコミュニティについて。前半の紹介については、(1) 他言語で経験がある (2) RubyおよびRailsについてはまったく知らないという方が対象となるでしょう。本書でさらっと学んで、あとは、巻末で紹介されているリソースにあたってくださいね、という感じだと思います。
それはさておき、この本の重点はやはり、後半のRubyの文化やコミュニティを扱ったパート群にあるのでしょう。Rubyという言語、そのデザイナであるMatzの思想が「自由と責任」「人間の重視」「名前重要」などのフレーズにより紹介されています。確かに、Rubyが人間に優しいプログラミング言語であると、僕自身実感するところが大いにあります。Rubyで書いていると、直感的な発想とコードとが一致する気持ち良さを感じることがよくあります。
また、いわゆる「アジャイル」なプラクティスについて多くのページが割かれて説明がされているのですが、それ自体は特にRubyコミュニティ固有のものではないとはいえ、歴史的な経緯をみるに、Rubyコミュニティに属する人々がそれらを唱導してきたことに異を唱えるひとはいないでしょう。そのような経緯に、Rubyという言語そのものの特質がどれほど寄与したのかはちょっとわからないところであるとは思いますが、いずれにせよ、現にRubyという言語・コミュニティと、それらプラクティスとの相性がよく、また、他のどのコミュニティよりも強く実践されていることは確かでしょう。
本書はさらに、コミュニティへの積極的な参加を促します。それは、GitHub上でのソーシャルコーディングから、地域Ruby会議を始めとするイベントへの参加、はたまた、海外のRubyistたちとの交流指南にまで広がっていきます。僕自身、Ruby歴3ヶ月弱の初心者でまだなにも知らないも同然ですが、それでもなお、Rubyコミュニティの国際性、というか、盛り上がりみたいなのは、たとえばYAPCを擁するPerlと比べてすら、感嘆すべきところがあると感じます。その意味でも、Rubyは「たのしい開発」に近い言語であるといえるでしょう。
とはいえ「仕事でRubyを使うのはなかなか難しい……」というひとにとっても、相澤歩氏が、いかにSIerという立場で業務案件にRubyを導入していったかという、ある種の政治的な立ち回りも含む、非常に興味深いインタビューなどを読むと、得るところが大きいのではないでしょうか。そのような事例も含め「たのしい開発」のために役立つ様々なプラクティスを教えてくれる本書は、言語としてのRubyを知っているかどうかに関わらず、広く読まれ得る本だなと感じます。