東京湾岸に生きる「普通の」人々にインタビューした文章を集めたものなのだけど、「普通の」といってもそれぞれに濃い人生を負っている人々ばかりで、その語りそのものが単純に面白い。それに加えて、各章でわりと長々と一見関係ないエピソードや知識、はたまた著者の個人的な思い出話が語られるのだけど、それがけっこう面白く、しかも最終的には話がつながってくる語りのうまさがあって、構成がとてもいい。
こういうなにげない人々の話をもっとたくさん読みたい。というか、ブログなどは、本来この本に出てくるような、「普通の」人々が淡々とその日常をもっと書いていくようになってほしいと思う。Twitterのようなところで普通の人々の日常が表出されてはいるけれども、もっとまとまった形で読みたいものだ。
しかし、タイトルに「畸人」とあるのはミスリーディングかもしれない。文字通りの畸人を求めると肩透かしを食うだろう。しかし、普通の人々の普通さこそが「畸」なるものであるということなのかもしれない。

- 作者: 山田清機
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2015/12/18
- メディア: Kindle版
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- 第1話 築地のヒール
- 第2話 横浜、最後の沖仲仕
- 第3話 馬堀海岸の能面師
- 第4話 木更津の「悪人」
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