昔っから「拙速は巧遅に勝る」なんていいまして。うちの大親分の受け売りなんですが。
これは早い話が、たとえ拙いことであろうと、巧くても遅いよりは速い方がずっとマシであるというわけですな。現代風には、Facebookの創業者、マーク・ザッカーバーグさんなんて方がDone is better than perfectなどといってるそうで、あれだけのサービスを作り上げた方のお言葉とあってみりゃ、ひとつ傾聴しようじゃないかと、そういう気持ちになるわけです。
もとはといえばこの言葉、古代中国の孫武てぇお方が、最古の兵法書と呼ばれる『孫子』ってぇ本でいったと、そういうことになっておるわけです。

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原文はこんな感じですな。
兵は拙速を聞くも、未だ巧にして久しきを睹(み)ざるなり。
(Wikipedia訳: 多少まずいやり方で短期決戦に出ることはあっても、長期戦に持ち込んで成功した例は知らない)
(『孫子』より)
するってぇと、拙くてもなんでも、まずはちゃちゃっとやってみるほうが、巧いことやろうとするよりもよいというのは、古来、戦争においての経験則として知られているわけですし、『孫子』といえば現代ビジネスにおいても戦争のアナロジにおいてずいぶん引き合いに出される書でもあるってぇんで、しばらく前にはこんな派手が飛ぶように売れたりもした次第。

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ところで、「拙速は巧遅に勝る」ってぇときに、そのフレーズには考えるべき要素が4つほどありますな。すなわち、
- 拙
- 速
- 巧
- 遅
の4つということになりますな。
ときに、「拙」という字は『字通』によりゃ、こんな訓義が述べられておりますな。
- つたない、たくみでない、へた。
- まずい、にぶい、おとる、役立たぬ、おろか。
こうしてみてみると、やけにけったいなありさま。仕事をするうえでこんな「拙い」ようじゃあ、与太郎よばわりされてもしかたがない。ちょいと目をよそに向けてみりゃ、恵比寿の親分がこんなことをおっしゃってたりする。つまり、「雑」=「拙」と、そういうことになりますな。
そう考えてみると、「速」ってのは世にいう「勢い」ってぇことになるんですな。世の中、うまいことできてるもんです。
「拙速は巧遅に勝る」ってぇわけですが、4つも要素があっちゃあ、頭がこんぐらがっちまう。図にして整理してみようってな運びとなるのも、当然のことですな。ってぇんで書いてみたのが、以下の図ってなわけだ。
こうやって整理してみると、一目瞭然。確かに「拙速は巧遅に勝る」。逆にいうと、「速」がありさえすりゃぁ万々歳。その時点で○以上って、そういう塩梅ですな。そりゃぁ、「巧」い、「巧」みであるに越したこたぁないけれど、速い上に巧いなんてぇ、それこそ「うまい」こたぁ、この世にはそうそうねぇわけです。
そうなってくると気になるのが、どんな時に「速」なのかが気にかかってくるのは道理ですな。リクツじゃぁわかっても、実際にうめぇこと使えないと、どんないい言葉だって意味がありゃしない。「速」があるってなぁ、こんな次第。
こうやって見ると、いつもの仕事仲間とのやりとりでいってることと変わんないかもしれない。それでいいんです。何も特別なことをいってるわけじゃなし。ただちょっと、「速」にフォーカスをあてて、いいじゃん、「速」じゃん、江戸っ子じゃん、とまあ、こうしてみりゃ自画自賛なのかもしれないね、あたしら「速」なだけが取り柄だからね。
ビジネスは戦である、なんて話もありまして、あたしなんざぁ、誰とも争わず、このペパボ長屋のみぃんなと末永く、楽しく暮らしていければそれで幸せなんでぇございますが。そうもいかねぇのが世の常ってぇわけでありまして。なんともまぁ、「拙遅」がらい世の中でございますな……。
おあとが拙いようで。ちゃんちゃん。