クレディセゾンでCTOをされている小野和俊さん(ブログTwitter)より、2020年7月29日発売の新刊をいただきました。どうもありがとございます。

小野さんは1976年生まれで同じ年なのですが、CTOというロールモデルについて同世代において先陣を切って、国内にはそういうひとがほとんどいない中で2000年代から作り上げてきた第一人者といえるでしょう(他には伊藤直也さんや藤本真樹さんも、そのような開拓者だと思います)。そんなわけで、同じ年代の彼らが高いレベルで活躍しているのを遠くから畏敬の念とともに遥かに見るしかなかったというような人です。

そうわけで、小野さんが長年書き継いでいる「小野和俊のブログ」を読むことで見識の一端に触れてきたわけですが、昨年からは一般社団法人日本CTO協会で理事としてご一緒させていただく機会を得ることができ、人柄に触れる機会を様々に持つことになり、とてもうれしく思います。その小野さんがブログの内容を元に大幅にリライトした単著を刊行され、それをいただくという光栄に浴したわけです。

ソフトウェア時代の経営という観点からの書評は、既に同じく日本CTO協会理事の松本さんが「「その仕事、全部やめてみよう」を献本いただきました|Matsumoto Yuki|note」でおかきになっているので、少し違う観点から感想を述べてみたいと思います。

小野さんがお話するのをうかがっていると(というほど機会があったわけではないですが)、シンプルで切れ味するどく問題にアプローチするスタイルでありつつ、言い回しのキャッチーさを合わせ持っていると感じます。それはブログにもよく現れているところだと思います。たとえば、多分一番有名な記事であろう「プログラマー風林火山 」は、そのフレームのわかりやすさと正鵠を射た内容によって、最近でも社内のSlackで話題にしたことがあります。

そのような小野さんのスタイルは、この本でも遺憾なく発揮されています。上述の「エンジニア風林火山」以外にも、この本ではこんな名フレーズが盛りだくさんです。

  • 「「谷」を埋めるな、「山」を作れ」
  • 未知の領域と変化していく領域ではPDCAではなく「DACP」が強みを発揮する
  • DXだけではなく、「CX(Customer eXperience)、DX(Developer eXperience)、EX(Employee eXperience)と3つを並べて書く」
  • 安定性重視のモード1と変化への対応スピード重視のモード2を使い分ける「バイモーダル戦略」
  • 組織内で最後の砦となるスペシャリストを目指す「ラストマン戦略」

この本では、セゾン情報システムズ、そしてクレディセゾンという大企業のCTOへ転じ組織を率いていった様子が時に生々しく語られるわけですが、その際にこういったキャッチフレーズを周囲に語り続けて動かしていったということが紹介されます。たとえば『ザ・会社改造–340人からグローバル1万人企業へ (日本経済新聞出版)』などで知られる三枝匡さんなども、戦略的であると同時に実はキャッチフレーズの人で、面白キャッチフレーズを本でいろいろ紹介しています。組織というのは理屈や数字だけで動くものではないですよね。それで、シンプルかつ本質をついたフレーズというのが、実はすごく重要だと思っているのです。

CTOという立場にある者が抱える問題というのは、もちろん一筋縄で解決できるようなことはほとんどないわけです。しかし、だからといって手をこまねいているわけには行かない。そこで、小野さんはシンプルに本質を見つめて、高い問題発見能力と、わかりやすいメッセージングによる実行力を発揮して、数々の改革を成し遂げてこられたのでしょう。ブログにおいても折に触れて述べられていたその様子が単著としてまとまったことで、小野さんの思考法の一端に触れられる一冊になっていると思います。

エンジニアのみならず、仕事を効率的に行いたいというひと、DXって何?というひと、様々な人々におすすめできる本であると思います。ぜひご一読ください。