こんにちは、あんちぽです。GMOペパボ株式会社で取締役CTOをしています。また、ペパボ研究所の所長や北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の社会人学生としても活動しています。本記事では、今年のエンジニア・研究者としての対外的なアウトプットについてふりかえりたいと思います。
本記事は「GMOペパボエンジニア Advent Calendar 2021」の12日目の記事です。11日目の昨日は、「ghqとgitconfigのincludeIfでリポジトリサーバーごとに設定を切り替える – Re: 醤油の一升瓶じゃあ戦えない」でした。
アウトプットの概要
対外的なアウトプットについて、自己紹介ページに記録するようにしています。それによると、今年は17回のアウトプットがありました。その内訳は、以下の通りです。
- 国際技術カンファレンス: 1回
- 国内学会発表: 2回(内1回は査読付き)
- 国内技術ミートアップ: 7回
- パネルディスカッション: 5回
- 招待講演: 1回
- 講義: 1回
また、国内学会発表に関しては、2件の受賞がありました。
全体を通しての感想
2021年は、コロナ禍の2年目ということで、2020年に引き続きリアルな場で集まる機会は持ちにくい年でした。一方で、国際的にも国内的にも数多くのカンファレンスやミートアップがオンラインで行われることが一般化したことで、参加することはしやすくなったように思います(参加した結果として得られることの多寡はともかくとして)。
そんなこともあり、今年はこれまでで一番対外的なアウトプットが多い年となりました。上記したアウトプットも、ほとんどがオンラインで行なったものです。出不精なこともあり、オフラインのみだったらこうはいかなかっただろうと思います。オフラインにもそれはそれでいい面がたくさんあるのですが、今後もオンラインとのハイブリッドが継続するといいなあと思います。
アウトプットの紹介
アウトプットの概要で紹介した内容について、それぞれのカテゴリに基づき、簡単に紹介します。
国際技術カンファレンス+国内技術ミートアップ(1回+7回)
まずは、技術的なアウトプットについて紹介します。
ElixirConf US 2021
対外的アウトプットとして一番大きかっただろうことは、なんといってもElixirConf US 2021での発表だろうと思います。詳しい内容や経緯については、会社のブログで「ElixirConf US 2021登壇報告: IoTシステムの開発における課題の解決を目論むElixir製のフレームワークPratipadについて発表しました」というエントリを書きましたので、そちらをご覧ください。後述する通り、昨年末からElixirの虜になっていて、その流れで大きな舞台で発表できたのはとてもよかったです。
以下でスライドと動画を観られます。
スライド
YouTube動画
技術系ミートアップ
「『プログラミングElixir 第2版』を読んでいまこそElixirに入門しよう」という記事に書いたとおり、昨年末にElixirと「運命的な」といっても過言ではないような出会いをして以来、1年を通じてElixir関連の活動をしてきました。そのため、ミートアップでの活動はほとんどElixir関連のものばかりです。また、9月ごろはNeos VRというメタバースプラットフォームにもハマっており、その話もしています。
Elixir関連(とNeos VRも再開したい……)は、来年も引き続き精力的にやっていくことになると思います。
- Nervesの新機能mix firmware.patchの(偏った観点からの)ご紹介, NervesJP #14 新年LT回, 2021年1月.
- NxでMNISTの手書き数字画像分類を試す, NervesJP #15 Nxを触ってみる回, 2021年2月.
- NeosからこんにちはーVRでライブコーディング, 鹿児島.mk #20 オンラインLT大会, 2021年9月.
- Multi-Tenant Erlang Distributionを目指して – ElixirConf US 2021参加報告, EDI#8+kokura.ex#47:ElixirConfUS凱旋会, 2021年10月.
- 話題提供(Pratipad: A Declarative Framework for Describing Bidirectional Dataflow in IoT Systems with Elixirの日本語での再演と議論), NervesJP #20 Pratipad(とRclex)でワイガヤする回, 2021年10月.
- Livebookの紹介, K-Ruby#27 年末LT大会, 2021年11月.
- Elixirでプログラミング言語を作ろう(動画), tokyo.ex Reboot, 2021年11月.
国内学会発表(2回、内1回は査読付き)
冒頭で書いた通り、ペパボ研究所の所長と社会人大学院生という、研究に関わる者としての活動もしています。今年は、修士2年ということでいよいよ研究に本腰を入れねば!というわけで、2つの研究テーマについて発表をしました。
SIGSE207
3月に、IoTデバイス内アプリケーションのアップデートについて、情報処理学会のソフトウェア工学研究会で発表してきました。アプリケーションのデプロイについては、本職のWebアプリにおいても大きな課題領域なわけですが、IoTデバイスにおいても今後ますます重要になると思います。そのあたりをErlangの持つHot Code Reloadingという機能を用いて解決できないかという試みです。
- 栗林健太郎, 山崎進, 力武健次, 丹康雄, IoTデバイス内アプリケーションの開発効率向上のためにコードの変更を動的に適用する方式の提案と実装, 研究報告ソフトウェア工学(SE), Vol.2021-SE-207, No.32, pp.1-8, 2021年3月.
IOTS2021(査読付き)
もう一つのネタは、こちらはメインの研究テーマとして、修士課程の研究として取り組んだ内容です(前述のElixirConf US 2021での発表は、この研究に関する技術的な側面にフォーカスした内容でした)。デバイス層、エッジ層、クラウド層の3層構造で成り立つIoTシステムは、実装や通信方式、データフロー・処理の記述などにおいて、複雑になってしまいます。それを解決しようという試みです。
- 栗林健太郎, 三宅悠介, 力武健次, 篠田陽一, IoTシステムの双方向データフローにおける設計と実装の複雑さを解消する手法の提案, インターネットと運用技術シンポジウム論文集, 2021, pp.48-55, 2021年11月.
こちらに関しては、論文とプレゼンテーションをそれぞれ評価いただき、優秀論文章と優秀プレゼンテーション賞をいただくという光栄に浴しました。ありがとうございます。

パネルディスカッション+講義+招待講演(5回+1回+1回)
技術や研究以外でも、たくさんの機会をいただきました。
パネルディスカッション
お声がけいただいて、パネルディスカッションでお話しする機会も多くいただきました。オンラインでのディスカッションには難しいところも多いのですが、気軽に話をできる・聴ける機会ではあるので、今後も機会があればどんどん参加したいと思います。
- パネルディスカッション / 社会人・学生・大学先生の3つの視点から語る“働き方と学び方改革”, 九州サイバーセキュリティシンポジウム, 2021年3月.
- パネルディスカッション / CTO&CDOの理想的なモノづくり組織, 【CTO&CDO】ものづくり組織のあるべき姿を考える, 2021年3月.
- トークセッション / 場という壁を超えてきた、インターネットの過去と未来(動画, レポート), デブラジ | 開発者によるオンライントークセッション, 2021年4月.
- パネルディスカッション(レポート1, レポート2, 追加の座談会)/ Keynote 変わる働き方とカルチャー、変えるテクノロジー, BIT VALLEY 2021 | ビットバレー2021, 2021年7月.
- パネルディスカッション / KEYNOTE:CTO対談, GMO Developers Day 2021, 2021年9月.
講義と招待講演
また、若い方々にお話しする機会もいただくことができました。バンタンテックフォードアカデミーの学生さんへの「特別授業」は、今年で3回目になります。毎年少しずつ趣向を変えて「エンジニアリングは楽しいよ!」ということをお話ししています。今年は、自分自身も学生なので、その点を絡めて話しました。
また、フィヨルドブートキャンプのみなさんへのお話については、自分自身の偏見も交えた話をあえてすることで、すでに一定の実績を成し遂げてきた方々が次のステップへ進む上で、元気付けられるようなお話ができればと思って取り組んでみました。
- 「現役の学習者」としてのこの1年, バンタンテックフォードアカデミー特別授業, 2021年4月.
- 自分の人生を生きる – 遊びで生きて価値観を育てよう, フィヨルドミートアップ2021年9月, 2021年9月.
おわりに
先にも書いた通り、今年はこれまでで一番対外的なアウトプットが多い年となりました。社会人学生をやっていることもあって、研究関連やそこから派生した内容が多かったように思います。とても楽しくやれており、大変にありがたいことです。また、来年度は博士後期課程に進学しようと思っているので、ますますアウトプットを加速させていく必要があります。
また、パネルディスカッションや若い方々へお話しする機会について、今後もチャンスをとらえて引き続きやっていきたいと思います。何かありましたら、どうぞお声がけください。
「GMOペパボエンジニア Advent Calendar 2021」の13日目は「lumeを試してみた 2021-12-13|hkt100rtkn」です。そちらも是非ご覧ください。