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- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2007/04/25
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カタギリジョー演じるシンは、作中何度かくりかえされるナレーションにある「眠い日本、眠れない日本」を単身飛び出して、91年、ジュリアーニ市長以前の、いまだ犯罪発生率が極度に高く危険だったニューヨークに飛び込む。そこで映画のタイトル通りの”HAZARD”を求めて、露天でその単語の書かれたTシャツを見つけてハシャいだりするものの、通りがかった女の子に「そんなヘタな英語、聞いたことない」と嘲笑されてブチギレ、あてどなくぶらついてみるものの、いかにも危険そうなブラザーたちに声をかけてみたらば、「奇遇だな!俺、HAZARDって名前なんだよ!」などと適当なことをいわれて意気揚々ついていき、結果、そっこーで身ぐるみはがされ、鏡に向かって「この小心者!小心者!」と呪詛の言葉を吐きながら、たたき割ってみせるのが精一杯。
そんな彼が、金もなく、コンビニで万引きしようとしている時に出会ったふたりの男は、「お腹すいてるの?まぁ、見とけ」などといいながら、いきなり銃を取り出し、パン強盗。ひとりはリー。詩人を自称し、マンハッタンを上半身裸にネクタイという格好で、奇声を上げながら人々に絡んで歩くことを詩のパフォーマンスと称する、謎のバイリンガル、その実アイスクリーム屋経営というよくわからない男。もうひとりは武田。坊主頭でひげ面の、イマドキの若いアンチャンという感じの、しかしいつニューヨークにやってきたのが、なにが目的なのかもわからない危険人物風に見えて、実は純朴な恋する男。そんな彼らに、なにがなにやらわからないままに仲間に引き入れられて、彼らの危険な遊びにのめり込んでいく。
……といったお話で、若者が無軌道な青春を謳歌する的な、まぁよくあるタイプの映画なわけだが、ストーリーもさることながら、いちばん印象に残ったのは、ジェイ・ウェストの、異様にテンションの高い演技ぶりだったりする。この俳優、初めて見たのだけど、ブラッド・ピットとリヴァー・フェニックスを足して2で割ったようなルックスで、ブラザー気取りの英語と日本語の高速ハイテンションなチャンポン言語を操り(実際には、カナダ出身で、さらにフランス語もおてのものだそうな)、銃をぶっ放したり、従業員に最近の成果について報告を求めたかと思いきやいきなりぶん殴ったりするのが激励だったりする、先述したとおりの破天荒キャラクタである一方、ホイットマンの詩を参考書に、シンにマンツーマンで英語を教えつつ、イーストリヴァーだかハドソンリヴァーだかを眺めながら、この世の悲しみを詠った詩を暗誦して見せるような一面も見せる。オダギリジョーのファンなので、彼目当てに見始めたにもかかわらず、リーばかりが心に残る結果となった。
ラストは、この手の映画ではお約束のごとく苦い結果に終わるのだが、しかし、リーの不安げな、あるいは、諦念の感じられる表情とは対照的に、なにやらむやみな自信を抱いたシンは、日本に戻ってひと暴れするべく、渋谷にたむろする悪そうな兄ちゃんたちとまずは一戦交えたりするのだった(こういう結末は、上述の通りお約束なので、こう書いてもネタバレにはならないだろう)。まぁ単純に、若い人が観ればなにかしらの奮発を喚起する映画たり得るのだろうし、そうでないひとが観ても、ここではジェイ・ウェストの素晴らしさについて述べたが、オダギリジョーはもちろんのこと、武田役の深水元基の純情ブリッコ演技もなかなかにいい感じなのだし、脇役として出演する池内博之もかっこいい。残念ながら、女の子についていえば、本作は全くもってなにも得られるところのない映画だったのだが……。
本作は、06年12月に公開されたが、園子温監督インタビューによれば、実際に撮影されたのは02年だったという。
長いこと寝かして、やっと公開になります。
その間、どんな事情があったのかはよくわからない。ただまぁ、青春映画なのであってみれば、公開時期の今昔は問わないエヴァーグリーンなものでなければ失敗作と断じる他ないのであってみれば、たいした問題ではないだろう。本筋から離れるが、冒頭に「91年、ジュリアーニ市長以前の、いまだ犯罪発生率が極度に高く危険だったニューヨーク」と書いたものの、スティーブン・D・レーヴィットとスティーヴン・J・ダブナーとの共著『ヤバい経済学』を読むと、成果が喧伝された、割れ窓理論に基づくジュリアーニの治安対策も、眉に唾して聞くべきものであったことがわかったりもする。
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- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
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