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  • 名和小太郎『情報セキュリティ』

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    今年から情報システム部門も責任範囲のひとつに入ったので、10年前の刊行当初に買って読んだこの本をあらためて読んだ。

    教科書的な情報セキュリティ本のようにはかっちり整理されているわけじゃないけど、戦後のコンピュータやソフトウェアおよびネットワークからなる情報システムの流れの中で、セキュリティに関する問題、その対策がどう認識され、克服されたりされなかったりしたかという俯瞰した知見を得られる本。

    背景を把握したので、次はもうちょっと教科書っぽいのを読もう。

    情報セキュリティ―理念と歴史

    情報セキュリティ―理念と歴史

    • Ⅰ 理解の枠組み
      • 1 情報システム、あれこれ
      • 2 情報セキュリティ、あれこれ
    • Ⅱ セキュリティの同時代史
      • 3 情報システム:自由のための、ただし制御も
      • 4 津新ネットワーク:秩序の基盤
      • 5 越境データ流通:人権 対 市場原理
    • Ⅲ 脆弱性
      • 6 ソフトウェア:秩序なし
      • 7 インターネット:秩序の解体
    • Ⅳ 試行錯誤的な制度設計
      • 8 監視:保護 対 侵害
      • 9 情報資源:公表 対 秘匿
      • 10 暗号論争:独占 対 競争
      • 11 Y2K:危機管理
    • Ⅴ 管理の文化
      • 12 情報セキュリティ:脅威に対して
      • 13 信頼の社会化装置:脆弱性に対して
      • 14 情報セキュリティの共有
  • 加藤恭子『星の王子さまをフランス語で読む』

    サン=テグジュペリ『小さな王子』(野崎歓・訳)からの流れで、フランス語原文で読んでみたくなったので、勉強を始めているところ。この本は、ストーリーに沿いつつ文法はもとより、繊細な読解についても示していて、とてもよかった。

    ただまあ、フランス語文法自体をちゃんとひと通りやってるわけじゃないので、一度には理解できない。次は文法書や他の本をやってみてから、また戻ってきて再読しようと思う。

    「星の王子さま」をフランス語で読む (ちくま学芸文庫)

    「星の王子さま」をフランス語で読む (ちくま学芸文庫)

    • 1 今、なぜ『星の王子さま』か
    • 2 読解力をつける秘訣
    • 3 動詞をマスターする
    • 4 キイワード “sérieux”
    • 5 星をめぐる放浪の旅
    • 6 蛇と出会う
    • 7 キツネとの対話
    • 8 別れの場面を理解する
    • 9 王子さまに託したメッセージ
    • 付録 辞書と活用表の使い方
    • あとがき
    • 文庫版あとがき
  • ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』

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    温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』を読んだ流れで、複数の言語を使って文章を書いている作家への興味が再燃してきたので、購入して読んでみた。

    ジュンパ・ラヒリの場合は、両親の言語はベンガル語で、社会的には英語を話し、また英語によって作家としての名声を得ており、自分から進んでイタリア語を習得してローマへ移住までしている。複数の言語を使う作家には、20世紀の典型的なパターンだと亡命があるが、ラヒリの場合は止むに止まれぬ衝動によって、自らイタリア語を選んだということになる。彼女はそれを、「亡命」という言葉からも疎外されていると書いている。

    複数言語を使わざるを得なくなった原因は、それはそれでそれぞれに興味深いのだけど、単純に複数の言語を使うことによる感覚の変化に興味がある。この本ではその「変化」が、アポロに追い回された挙句に月桂樹となってしまったダフネや、蝶の変態のような比喩などを用いて様々に語られるのだが、やっぱり自分でやってみないことにはよくわからないよなあと思うのであった。

    そんな中でも、別の言語で書くのは自由を制限することで、かえって別の自由があり、そのことで内面をみつめる契機になるという話があったのだが、それは僕自身、たいして英語は書けないけど、しばらく英語ばかり書いていた時期を思い返すとなんとなくわかるなと思った。日本語だと、容易に使えるがために表現が自動化されてしまう感情を、じっくり見つめなおすことになる。

    もう一度、「べつの言葉で」書くという修練を、自分でもやり直してみようと思う。

    べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)

    べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)

  • 温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』

    書店でたまたま見かけてぱっと買ってみた本だったのだけど、とても素晴らしかった。台湾における言語使用の実際に興味があって、第4話 多言語社会 – antipop.fm (あんちぽえふえむ)でも話していたりするのだけど、著者の家族の中でのそれは、もちろん文章が上手というのもあるにしても、葛藤がありつつもとても温かくて、心動かされた。

    台湾生まれ 日本語育ち

    台湾生まれ 日本語育ち

      • 私のニホン語事始め
      • なつかしさよ、こんにちは
      • ピンイン様の逆襲
      • 眠る中国語
      • ママ語の正体
      • 南方訛り
      • ペーパーガイジン
      • 「投票」したい
      • 台湾総統選挙を控えて
      • 台湾総統選挙の日
      • わたしの国々
      • 母「國」語の憂鬱
      • 幻の原稿
      • 龍の年
      • 祖母語、母語、娘語
      • 永住権を取得した日
      • イマジナジア――馬祖への旅(1)
      • 台湾海峡の彼方へ――馬祖への旅(2)
      • 「国語」を抱きしめて――馬祖への旅(3)
      • 失われた母国語を求めて
      • 終わりの始まり
    • あとがき

  • 宮崎哲弥・呉智英『知的唯仏論』

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    文庫化されていたのを見たので、買って読んでみた。仏教ってそもそもなんだろうね、という話と、哲学・社会的な話題とからめた話とが語られていて、読みやすい。しかし、宮崎さんはよくあれこれ知ってるなあとひたすら感嘆。

    なんか後半は乗れなくてさらさらながしちゃったのだが、原理的には進化論ぽい世界と、世間的には合理的なプラグマティズムという、自分の二代関心事が融合しているように思えるところが、自分が仏教に興味を惹かれるところなのだろうとあらためて思う。

    知的唯仏論: マンガから知の最前線まで-ブッダの思想を現代に問う (新潮文庫)

    知的唯仏論: マンガから知の最前線まで-ブッダの思想を現代に問う (新潮文庫)

    • まえがき
    • 第1部 仏教をめぐる、やや通俗的な入り口
      • 1 仏教とは
      • 2 宗教を描く
      • 3 輪廻の解釈学とオカルト批判
      • 4 宗教家のちから
      • 5 ブッダと日本仏教
    • 第2部 宗教と「この私」
      • 1 仏教学と体験性
      • 2 神秘体験と救済
      • 3 実存を問う病
      • 4 愛と渇愛
      • 5 現代人の四苦
    • 第3部 仏教徒社会
      • 善悪の彼岸
    • あとがき

  • サン=テグジュペリ『小さな王子』(野崎歓・訳)

    光文社古典新訳文庫が半額セールをやっているので何冊か買ったうちの1冊。今回初めて読んだ。とてもよかった。特に、(多くのひとがそうであるだろうように)以下の一節に感嘆を覚えた。

    そして王子は、キツネのところに戻ってあいさつした。

    「さよなら……」

    「さよなら。じゃあ、秘密を教えてあげよう。とてもかんたんだよ。心で見なくちゃ、ものはよく見えない。大切なものは、目には見えないんだよ」

    「大切なものは、目には見えない」ちいさな王子は、忘れないようにくりかえした。

    「時間をかけて世話したからこそ、きみのバラは特別なバラになったんだ」

    「時間をかけて世話したからこそ……」ちいさな王子は、忘れないようにくりかえした。

    「人間はこんな大事なことを忘れてしまったんだよ」とキツネはいった。「でも、きみは忘れちゃだめだよ。自分がなつかせた相手に対して、きみはいつまでも責任がある。きみはきみのバラに責任があるんだよ……」

    「ぼくはぼくのバラに責任がある……」ちいさな王子は、忘れないようにくりかえした。

    その「バラ」とは、コンスエロのことなのだろう。

    ちいさな王子 光文社古典新訳文庫

    ちいさな王子 光文社古典新訳文庫

  • 盛田茂『シンガポールの光と影』

    2015年11月24日付の日経新聞で紹介(シンガポール映画の気骨 厳しい検閲にもひるまぬ表現者たち100人以上を取材 盛田茂 :日本経済新聞)されていた著者の本が刊行されていたので、購入して読んだ。

    シンガポールといえば、お国柄や実際に行って感じたイメージから、さぞかし文化的に不毛な国なんだろうなあと思っていたのだが、豊穣とはいえないのは確かだろうけれども、映画を通じて多民族・言語国家の実際や社会問題などを、検閲をかいくぐったり、時には検閲当局と交渉したりしながら強かに表現を行っている映画作家が多数おり、また、その作品も多様なものであることを知り、不明を恥じた。

    本書は、第1部でシンガポールにおける映画事情を歴史を概観しながら述べた後、第2部ではシンガポール社会・文化の諸断面を紹介しつつ、それを描き出す作品を紹介するという構成になっている。単純な社会反映論というには、社会・文化への目配りは幅広く、シンガポールという国についての理解を深めるとともに、映画情報も知ることができるという意味で、とても役に立つ本であると思えた。

    シンガポールの光と影 この国の映画監督たち

    シンガポールの光と影 この国の映画監督たち

    • 推薦の辞 祖国のために身銭を切る人たち(内田樹)
    • はじめに
    • Ⅰ部
      • 第1章 シンガポールの歴史
      • 第2章 シンガポール映画の歴史
      • 第3章 文化・芸術政策と映画産業推進政策
    • Ⅱ部
      • 第1章 表現の自由と規制の間で
      • 第2章 ノスタルジーと歴史再評価
      • 第3章 言語と大衆文化
      • 第4章 宗教と民族の歴史
      • 第5章 教育と階層の固定化
      • 第6章 徴兵制と国民意識
      • 第7章 LGBTと伝統的家族観
      • 第8章 加速する少子高齢化社会
      • 第9章 外国人労働者と差別意識
    • あとがき
    • 参考文献
    • 事項索引
    • 人名索引
  • 「ゲンロン1 現代日本の批評」

    先日刊行された「ゲンロン」がKindle化されているのを見つけたので、買って読んでみた。批評関連の文章を読むのって久しぶりだなあ。

    『近代日本の批評』の現代版「現代日本の批評」は、1930年代の文芸復興期と80年代のニューアカがパラレルな現象であり、メディアによってもたらされたものだったという図式を元にあれこれと話しがされるのだが、図式はわかりやすいけど個別の話はどうなんだろう、わかんないな。左翼総会屋系雑誌から、82年の商法改正後の企業メセナ系雑誌へという流れは、知らなかったのでなるほどなあと思った。

    批評からは随分遠ざかっていたのだけど、なんかこういうのもあれこれ読まないと考え方が硬直していってる感じがするので、文芸と合わせてしばらく読んでみようかな。

    ゲンロン1 現代日本の批評

    ゲンロン1 現代日本の批評

    • 作者: 東浩紀,鈴木忠志,大澤聡,市川真人,福嶋亮大,佐々木敦,安藤礼二,黒瀬陽平,速水健朗,井出明
    • 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
    • 発売日: 2015/12/23
    • メディア: Kindle版
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  • 『身体と親密圏の変容』(岩波講座 現代 第7巻)

    千葉雅也さんの文章を読むために買ったのだが、せっかくなのでその他のも読んでみた。千葉さんの文章は、唐突に社会的な話と結び付けられているように思えて、そこを納得さえすれば面白いけど、それでもなおそういう話と「人文学」とになんの関係があるのかはよくわからないのであった。

    赤川学さんの文章は、要するに期待水準を変えないと少子化は止まらないよねという話だと読めたが、では、どうやって変えるのかについては難しいよなあと思う。風間孝さんの文章は、なるほどそういう「構造的な不正義」というのはありそうだとは思うけれども、それがどのような「構造」なのはわからないし、どうしたら「不正義」を正せるのかもわからない。なんかそういう議論が多いな、と思う。

    下條信輔さんの文章は、20年ぐらい前に『サブリミナル・マインド』を読んで以来だが、面白かった。神経科学による還元が自由意思を「蒸発」させるかに見えたとしても、(1)自由を感じるのは後付けだよ、(2)自由な選択が物理的現象に還元されても、その内容は別だよ、(3)自由が幻想であったとしてもそれは生得的に変え難いものだよという理由で、「蒸発」したりはしないという。

    となると、社会において自由がどのような機能を持っているのか、どう運用したら便利なのかという話をすればいいじゃんね、ってことになって、自由意思があるかどうかは別にどうでもいいんじゃない?という意味においては、「蒸発」するんじゃないかなあと思う。

    そんなこんなで、難しくてちゃんと読めてない文章も多いけど、論文集みたいなのを読むと自動的にあれこれの分野について考えることになるので、たまにはいいなと思った(講座ものを読むのなんて学生の頃以来だ)。

    身体と親密圏の変容 (岩波講座 現代 第7巻)

    身体と親密圏の変容 (岩波講座 現代 第7巻)

    • 大澤真幸:総説 変容の最も鋭敏な部分
    • 1 「身体」としての現代
      • 1 菅原和孝:<語る身体>の生成
      • 2 下條信輔:潜在脳、自由意思、社会
      • 3 熊谷晋一郎:関係としての身体――障害を生きる経験から
      • 4 千葉雅也:思弁的実在論と無解釈的なもの
      • 5 門林岳史:ポストメディア時代の身体と情動――フェリックス・ガタリから情動論的転回へ
    • 2 「家族」の終焉?
      • 6 千田有紀:揺らぐ日本の近代家族
      • 7 赤川学:家族の多様性と社会の多様性――少子化をめぐって
      • 8 高谷幸:近代家族の臨海としての日本型国際結婚
    • 3 「性」をめぐって
      • 9 樫村愛子:現代社会における性的差異と性関係――ラカン派精神分析の観点から
      • 10 風間孝:性的マイノリティをとりまく困難と可能性――同性愛者への寛容と構造的不正義

  • 三谷宏治『戦略読書』

    経営戦略全史 50 Giants of Strategy (ディスカヴァー・レボリューションズ)』『ビジネスモデル全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)』の三谷宏治さんが、読書論の新刊を出したということで、購入。すごい読書家なのだなあと驚く。セグメントわけて読みましょうというのは良い話だと思う。しかし、著者は本を読むのが早いので1冊平均4時間としているが、4時間では読めなさそうな本もたくさん紹介されているので、そこはそれぞれでがんばるしかなさそう。

    戦略読書

    戦略読書

    • はじめに
    • 序章 戦略読書のススメ – 読書には戦略が必要なのだ
    • 第1章 読書ポートフォリオ・シフト – セグメント管理で資源配分を考える
    • 第2章 セグメント別ワリキリ読書 – 読み方を変えて効率的にリターンを得る。
    • 楽章1 ボクたちは読んだものでできている – 私的読書全史
    • 第3章 発見型読書法 – 5つの視点で5倍読み取る読め方革命
    • 第4章 知のオープン化 – 書斎と本棚と魔法の1冊
    • 楽章2 みんなと同じ本ばかり読んではいけない – オリジナリティを育てる珠玉の12冊
    • 終章 知と行のサイクル – 読書→思索・行動→発信スキル
    • おわりに
    • 付録 セグメント別ブックガイド – 独自の視点と思考をつくるための435冊